2013年夏の終わりに、肘にアトピーを発症しました。
元々小さい頃にアトピー持ちで、成長するにつれ無くなったものの、一度中学に入った頃、顔に赤い湿疹が出来、皮膚科で処方されたステロイドを何も気にせずしばらく塗っていたことがありました。いっとき良くなりましたが、しばらくすると顔中真っ赤になり、体にも湿疹が出来、どうすることも出来ずにひと冬大変つらい想いをした経験がありました。
この時、食事に気を付けたことに加え、漢方を試したことで快方に向かった経験があり、今回も皮膚科でステロイドは処方されたものの、使うことなく漢方薬局に向かいました。
薬局では、アトピーは患部が熱をもっているので、それを冷やすことが必要とのこと。確かに患部は赤く熱をもち、掻き崩して痒くてしょうがない状態であり、この症状部位だけみると説明にも納得できましたが、飲むと、体が震えるほど寒い状態が続き、症状も改善しないことから、しばらく様子を見て止めてしまいました。
湿疹はだんだんと両肘、首等に広がっており、何とかしないといけないとあせる日々が続き、皮膚科に行くも、やはり「ステロイドを塗れ」と言われるだけで、塗らないことに対して説教までされる始末。そんな時にたまたま見つけたアトピー専門の漢方薬局の扉を叩き、そこで言われたのは、「悪い熱が体にこもった状態。一旦これを冷ました上で、胃腸の状態を整えていくことで、治ります」とのこと。アトピーを専門にしているということもあり、藁にもすがる想いで処方を受け、毎日毎日薬を飲み続けました。
食事も野菜中心のものを心がけ、言われた通りの薬{消風散(しょうふうさん)等}を毎日飲んでいたものの、転がるように症状は悪化していきました。
体は寒く、下痢が止まらず、湿疹は顔にも広がり、まぶたは腫れ、仕事だけでなく日常生活に支障をきたすレベル。食欲も減退し、家で横になっていることが多くなり、さすがにおかしいと思い薬局に連絡すると、薬を変えましょうとのこと。これで大丈夫ですと処方されたのは、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)という薬。大変苦いものだったが、辛抱強く毎日飲み続けました。
しかし、症状は強くなる一方。
この頃には顔も体もガサガサで、周りの人が驚くような見た目になってしまい、眼鏡とマスクで顔を覆いながらなんとか通勤していましたが、今思えば、この時点で治療方針がおかしいのではと気付くべきでした。しかし、アトピー専門の漢方薬局という点で処方に間違いがあるはずは無いと信じていたことと、これまでの自分の生活習慣(食事・酒等)が悪かったことがこの症状の悪化を招いていると思い込み、ひたすら食生活その他を改めることに勤しんでいました。
発症から2ヶ月程度経ち、ふと、もう一度治療方針を変えてみた方が良いのではという気持ちになりました。休日に寝込んだ状態でパソコンに向かい、薬局を検索していた時、ふと目にとまったのが、和歌ノ浦薬局さんのHP。
「冷えが進みすぎて、なけなしの熱が体の表面に浮き上がってきたのがアトピー。/ 消風散(しょうふうさん)や黄連解毒湯はアトピーの治療といえばまず挙げられる漢方薬だが、熱からくるアトピーには効果があるものの、冷えが原因の場合は冷えを加速させるだけで、効果が無いか、悪化する場合もある。」
冷えからくるアトピーについての記述が、ほとんど全て自分にあてはまることに気付き、ピンとくるものがありました。次の日、もうここで駄目なら打つ手は無いという気持ちで予約の上、往訪し、これまでの経緯を先生に説明。やはり、元々冷えやすい体質に、冷えを加速させる薬が悪さをしている可能性は高いとのこと。これまで高価な薬を律儀に毎日祈るような気持ちで飲み、逆にそれが症状を悪化させていたと思うと、あまりに情けなく、涙が出そうになりました。
更に先生から「アレルギーというのは、どこに原因があるかを判断することが難しい。今後は石橋を叩くように慎重に薬を処方していくことになるし、急に症状が無くなるということはなく、良くなったり悪くなったりしながら、気付いたら当初より改善しているということになると思う。また、これから体を温める方に変えていくけれど、これまで冷やしていたのに急に温めると、体が驚いてどんな反応をするか分からない。故に、本当に使いたい薬は後回しにして、まずは少しずつ体を温める薬を処方します。」と説明がありました。
ここでは正直な気持ちとして、あまりにも全身がひどい状態にあったので、即効性のある薬が欲しいと思っていましたが、これまで薬局を転々としていた際に、これさえ飲めば大丈夫というような断定的な治療や、あせってそれを受け入れていたこちらの姿勢が逆に悪い結果を招いていたことを思い出し、慎重に体質や状態を見極めようとして頂いていることを感じ、むしろ信頼感が増したのを覚えています。
薬を飲み、これまでの経過を振り返りながら、「ここから徹底的に、自分でアトピーを治そう」という気持ちが湧いてきました。「こんな状態になってしまったのは、これまでの悪い生活習慣に加えて、知識も無く、ただ言われた通りの治療を受けてきた、病気に対して無知な自分に原因がある。和歌ノ浦薬局さんの力を借りながら、全面的に頼るのではなく、アトピーに有効と思われることを調べ、自分で徹底的に実践しよう」という気持ちになりました。
本やインターネットで情報を集めながら、処方された薬を飲み始めて3日ほど経った時、顔の赤みが徐々に引いてきたことが分かりました。体を冷やす薬を止め、温め始めたことが治療の方向として間違っていないと、一筋の光が見えた気がして、本当に嬉しかったことを覚えています。これを契機に、漢方薬に加えた自分なりの治療方策を毎日ストイックに実践しました。
諸々調べていくうちに、アトピーには、冷えと胃腸の2つが大きく関わっているのではと気付きました。あくまで自分の中でひねり出した仮説ですが、以下が自分の体質含め、あてはまるのではと感じたアトピーの原因です。
完治したという人の経験談を紐解くと、多く共通するのは
というそもそもの体質で、完治までのアプローチは、
というシンプルなもの。
そのアプローチとして、自分が試したのは以下の3つです。
・毎朝ジューサーで絞る人参リンゴジュース
・キャベツ・玉ねぎ・大根等を大量に食べる
・乳酸菌を意識的にとる
1.については、人間は上半身に比べて常に足先が冷たい状態になりがちですが、徹底的に下半身を温めることで血行を良くし、内蔵の機能を上げ、溜まった毒素の体外への排出を促すというもの。
朝と晩にできるだけ長く半身浴をして、汗をかき、芯から体を温めることを心がけました。休日は何時間もお湯につかり、ひたすら下半身を温めていました。この習慣を始めてみて、これまで自分は湯船に浸かっていても、熱すぎるお湯に短時間つかっていただけで、体の表面だけしか温められていなかったと実感しました。
半身浴をしていない時は、できるだけ厚く沢山靴下を履いて、足を温めます。今も、外では3枚、家では7枚履いています。(進藤義晴氏の「冷えとり健康法」参照)
2.は、日々の暴飲暴食で疲弊しきった胃腸を休めてあげるというもの。
胃腸を含めた消化器官には、消化と解毒という2つの働きがあり、絶え間なく食事を摂取していると消化することで内蔵は大忙しですが、食べない時間を長く設けてあげることで、体内に溜まった余分なものを解毒、排出する働きに切り替え、体を綺麗にする方向にシフトするそう。
自分は朝食を抜き、昼は軽く蕎麦等の消化の良いものを食べ、夜は野菜中心の食事を心がけ、週末に1日か半日、飲み物だけで過ごし、胃腸機能の回復を待ちました。
3.については、とにかく野菜から栄養をとり、胃腸を整えることを考え、毎日朝一番にジューサーで絞って飲む人参リンゴジュースや、キャベツ、玉ねぎ、大根等を生で大量に食べること、更にはビオフェルミンや納豆、味噌等の発酵食品で腸内環境を良くしようと思い、全般的に意識的に摂取していました。(石原結實氏の各種書籍参照)
これらの徹底的な実践でベースの生活と体質を変えながら、処方頂いた薬で直接的に症状をやっつけるという意識で、日々を過ごしていました。薬については最初のうちは短期間分で出して頂き、その期間に体に起こった変化や症状の度合いをじっくり話し合いながら、次の薬を決めるというやり方で、相談しながら一緒に治していくという先生のスタンスが、自分で主体的に治したいという気持ちになっていた身にはとても有難かったです。
今もどこかで、必死に治療方法を探しながらインターネットを見ている方の目に、この文章が留まること、そして治療の一助になることを願っています
結論としては、この生活を続け、1ヶ月程度経った頃には顔の湿疹は消え、肌は見違えるほど綺麗になり、2ヶ月経った頃にはその他の腕や背中の湿疹もほぼ雲散霧消していました。
治り方としては先生の仰った通り、最初は症状に波があり、引いたと思ったらまた赤くなり、それを繰り返しながら次第に引いていくというイメージで、後半になるにつれて治るスピードが速くなっていきました。
今は症状は無いものの、やはり薬と自分で考えた生活スタイルは継続しており、酒や食事等で少々はめを外すことはあっても、冷えと胃腸を整えることを意識した生活を心がけています。
今回のことでアトピーとは、「今の生活スタイルの何かが自分の体に合っておらず、体内から発せられている警告なのでは」と感じました。「このまま今の生活を続けていたら、いつか取り返しのつかない病気になりますよ」というのを体が教えてくれているのではないかと今は思っています。
その体からのサインである皮膚症状に、表からフタをしてしまい、見なかったことにするのがステロイド外用薬であり、生活習慣を変えない限り、どこかでそのフタがもろくなった時に体に爆発的に症状が出てしまう。これがアトピーの正体なのではないでしょうか。
もちろん、生活スタイルと体質は人によって異なるわけで、原因となっている要素は一概には言えないと思いますが、真摯に生活を見直し、体からの声に正直になることで、とるべき方法は見えてくるのではないかと考えています。その人それぞれの体質を見極める一助となるのが、漢方診療であり、体質改善の強力な助っ人が漢方薬なのだと思います。
今はインターネット等で、アトピーその他病気に関する情報は山のようにありますが、その中で本当に真実に近い情報は、大変少ないと実感しています。弱者の気持ちにつけこむアトピービジネス、未だに繰り返しステロイドのことばかり宣伝する医薬業界。症状の原因に人それぞれの側面がある分、これといった明確な治療がし辛く、ますます患者を取り巻く状況は複雑なものになっているのではと思います。
赤くなってしまった顔や腕を鏡で何度も見ながら、どうしたら良いのか途方に暮れ、痒みと戦っていた時、偶然目にした和歌ノ浦薬局さんのHPがきっかけで、私は治療方針を変えることができ、アトピー症状を治すことができました。多分今もどこかで、必死に治療方法を探しながらインターネットを見ている方の目に、この文章が留まること、そして治療の一助になることを願っています。