漢方薬を生かすも殺すも腸内細菌しだい

漢方薬を生かすも殺すも腸内細菌しだい

漢方薬を生かすも殺すも腸内細菌しだい

定例会の様子

 

 

 

大型台風21号が大阪に向かってやって来る10/21の午後、新大阪で大阪中医薬研究会定例会に参加した。講演第2部は、元大学教授の田代眞一氏。題は、『漢方薬はなぜ効くのか』。自身の高校時代から現在までのお話をされながら、途中研究成果など学術的な部分を入れていくスタイルで飽きさせず講演はあっという間に終わった。若手研究時代は学会で教授陣とよくやりあったそうで、そのお話をとてもにこやかにお話しされるのが印象的だった。その講演内容を私見も交えながら頭に入れておくために書くことにした。

 

 

 

生薬には、有効成分がある。それも単一ではなく多種多様な有効成分が含まれている。漢方薬は複数の生薬で処方が組まれているため、有効成分は相当数含まれることになる。互いの効果を高め合うものもあれば、拮抗する成分も存在する。まだ知られていない成分も存在する。

 

 

 

漢方薬は口から入れて腸内から吸収されて薬効を示す薬である(実際はそれだけではない。)。それにはいくつかのハードルを越えなければならない。腸まで行くには、水に溶けやすい状態でなければならいし、腸管から吸収した後は油に溶けやすい状態にならないと薬としての効果を発揮できない。そのカギを握るのが、配糖体と腸内細菌(資化菌)である。配糖体とは、糖とアグリコン(薬効成分)がくっ付いたもの。糖がくっ付くことで水に溶けやすく腸内まで行くには都合が良いのである。ただこのままでは薬効を発揮できない。腸内まで届いた後は、薬効を発揮するために配糖体の糖を取り外さなければならない。その役割を担っているのが、腸内細菌(資化菌:配糖体の糖を食べて増殖する菌のこと)である。資化菌が糖を食べることではじめて活性化し薬効を示す。

 

 

 

資化菌は腸内細菌叢の中で割合的には少ないため、生薬の配糖体の糖を食べて増殖するまでには時間がかかり、つまり薬効を示すまでに時間がかかる。漢方薬は、効果が出るまでに時間がかかるのはこのことを指している。しかし、漢方薬には風邪薬など即効性を示す方剤も数多く存在する。その理由は、生薬の薬効成分には配糖体だけではないから。アルカロイドという腸内で代謝を受けずにそのまま吸収されて薬効を示すものもあれば、香りを放つ製油成分や苦み成分は、鼻や舌を刺激して、神経を介して薬効を示すものもある。葛根湯に即効性があるのは、主薬である麻黄はアルカロイド系であるし、桂皮は精油成分であるから。

 

 

 

少し主題から離れたので元に戻す。漢方薬の薬効成分は、多様な作用機序が存在することを述べたが、多くは配糖体であることから腸内環境を整えておくことが重要になる。漢方薬を効かせようと思えば、抗生物質は出来るだけ飲まない方が良い(やむを得ない場合は、服用してください)。お腹が冷えて下痢がちな方は、腸内を温め環境を変えることから始めなければ、薬効を示すことはできないか、効果を示したとしてもわずかと言える。便秘がちな方も腸内環境は良いとは言えず、毎日便通がある状態にして良い環境に整える必要がある。経験上腸が弱い人は、自然治癒力も弱いと感じていて、まず腸を健康にすることからやっていた私にとって今回の講演は、患者さんに説明するうえで非常に分かりやすく、とてもためになる講演だった。ありがとうございました。

 

 

 

  • この記事を書いた人: 国際中医専門員 医薬品登録販売者 三ツ川道洋
  • この記事を監修した人: 薬剤師 三ツ川亜希

 

 

 

投稿日: 2017.10.31