味にはそれぞれ異なった治療効果があります。
辛味は、発散・行気・活血などの効能・効果が。
苦味には、瀉下・降逆・燥湿などの効能・効果があります。
発散とは、停滞した気血を体の外側・上方に動かすイメージです。ずっと寒いところにいて風邪を引いちゃった場合、辛味の発散の出番です。風邪を引くと悪寒や頭痛や肩凝り、のどの痛みなどの症状が出ますが、これは冷えによる気血の停滞によって起こります。この時に辛味の生薬で冷えを外側に追い出して、停滞した気血を動かしてやります。例えば生姜・シナモン・紫蘇・麻黄が、代表的な生薬です。漢方薬で言えば麻黄湯、葛根湯などですが、これらは発散をイメージして処方構成されています。
行気は、文字通り気を巡らせる効果があります。香るものが多く、薄荷(ミント)陳皮(ミカンの皮)や沈香(焼香に入っている高価な香木)などがこれにあたります。香りの良いものって気分が良くなりますが、実際にストレス症状に用います。
瀉下は、これも文字通り便からいらないものを出すイメージです。高脂血症・胆石・黄疸などは、便から出す目的で瀉下法を用います(胆石は、尿からも出します。)。
降逆は、停滞或いは逆行した気血を下に降ろす作用のことを言います。咳、逆流性食道炎などに使います。例えば、杏任が代表生薬になります。
長々となりましたが味にはそれぞれ効果があるのですが、味の組み合わせを考えることによってより治療効果を高めることが出来ます。タイトルにありますように辛味と苦味を合わせるとどうなるかと言いますと、体の中に溜まっている滞っているものをいったん上方に開いてから下に降ろしてデトックスするという効能効果に代わります。ですから解毒したいデトックスしたい時に最適な組み合わせの一つとなります。
蒼朮という生薬があります。この生薬は、辛味と苦味を両方持っています。ですから先ほど説明したように開いて降ろしてという経路でデトックスに働きます。具体的には関節に溜まった余分な水分を取り除き関節の治療に用いることが出来ます。胃腸にいらない水がたまると悪心、嘔吐、下痢、倦怠感、頭痛などを呈しますが、蒼朮を用いると先ほどの経路をたどっておしっこから余分な水分を排泄してくれます。
桔梗も辛苦両方の味を備えていて、辛味で肺の気血津液を動かす力を強化し、滞った気血津液を下へと導きます。於血を取り除く血府逐於湯に桔梗が配合されているのはこういう意図があります。※於血の於は、本当は於に病ダレが付きます。
辛味は肺に帰経するものが多く、また肺は大腸と表裏の関係をなすため大腸と親和性が強く、苦味の瀉下薬と共に用いると効果絶大となります。五積散はこのイメージで作られた漢方薬なのかなと思っています。
以上、辛苦法(備忘録的に)でした。
投稿日: 2017.09.28 文: 三ツ川道洋