西洋不妊治療は、基礎体温測定や子宮卵管造影、フーナーテストなど検査を行い、その結果に基づいて個別に治療方針が決定されます。治療は各段階でステップ1〜4まで分かれます。
ステップ2のクロミフェン療法は、ホルモン剤のひとつ排卵誘発剤で排卵率は70%。視床下部に作用し卵胞を発育させ排卵を誘発させます。エストロゲンとよく似た構造のホルモンで、視床下部にあるエストロゲンレセプターに作用し、エストロゲンが少ないぞ!ってことでどんどん脳下垂体からFSHを放出します。
この治療を多くの方が抵抗なく受けてらっしゃるでしょうし、抵抗があったとしても副作用を恐れてのことかもしれません。ですが、このステップ2のクロミフェン療法で認識して頂きたいポイントは、”ホルモン剤を使うことによって体は酷使される”ということです。
普段から疲れやすい等の不定愁訴がないような健康な人であれば、あるいは少々体を酷使しても耐えられるかもしれません。しかし、生来虚弱な体質かあるいは年齢的な衰えを感じている方などは、これを続けると体調が悪くなる可能性があります。例えるならそれは、「痩せ馬に鞭を打って走らせるような療法」と言えるでしょう。
排卵誘発剤を使って起きる副作用(頚管粘液の減少、子宮内膜が厚くならない、のぼせ、めまい、口の渇き、お腹のはり、鬱状態、乳房に不快感など)から見ても、体は酷使され消耗しているのが分かります。これらの症状は漢方でいう『陰虚(いんきょ)』の状態の症状です。
『陰虚』とは何か??陰虚の”陰”とは肉体を形作るあらゆる物質と把握してください。細胞、組織、器官、血液、水分、ホルモン、酵素、タンパク質など、形ある全ての物質のことを指しています。これらが消耗すると陰が虚している状態―つまり陰虚となり、”のぼせ、口渇、便秘、めまい”などの症状を訴えます。つまり『陰虚』とは体を構成するあらゆる物質の衰えと言えます。
こうならないためにも普段から体が弱いと感じている方や年齢的に衰えを感じている方は、ステップ1からすぐステップ2に行くのではなく、「ステップ1.5」としての漢方療法を取り入れることが、その後の不妊治療において重要なことと言えます。
それは何故かと言いますと、漢方薬は「痩せ馬に鞭を打つ」のでは無く、「鞭を打たずとも颯爽と走ることができ、筋肉質で髪もツヤツヤの健康な馬に変える」ことを主眼に置いた療法だからです。ご存じのように漢方は体質を改善できる医学だからこそ、このような療法を行うことができるのです。西洋医学の療法とは全く土俵が違います。
まず、ステップ2に移る準備段階としての漢方療法考えると、陰を消耗しないよう補陰薬という漢方薬を用いることによって副作用を防ぎ、ホルモン剤による体への酷使にも耐えうる体作りをすることが可能です。「痩せ馬」ではなく「健康な馬」になることによって、例え「鞭を打たれても」負担無く走ることができるのです。つまり、ステップ1.5の漢方療法を取り入れることによって、体への負担が少なく、しかもステップ2の治療効果が飛躍的にアップさせることができます。
でも、ただそれだけのことではありません。
漢方療法によって「鞭を打たずとも颯爽と走ることができ、筋肉質で髪もツヤツヤの健康な馬」に変わることが出来るということが、どういうことだかお分かりでしょうか?そんな健康な体にかわれたならば、自然妊娠は無理と医者に判断されている方でさえも、体に無理のない漢方薬単独で自然妊娠することができる可能性が出てくるということです。
それこそが、漢方療法が優れているところです。ここは是非皆さんに認識を持っておいて頂きたいところで、もちろん、それを目標に漢方療法を行っています。体質を変えるということにはもちろんそれなりの時間も必要です。でも、じっくりご自身の体と向き合って漢方薬を続けられた方には、確実に成果が表れています。
クロミフェン療法は、排卵はするけれども妊娠率は下がるというとんでもない治療の側面を持ち合わせていますから、なおのこと自然な形で妊娠力を高めることのできる漢方薬の併用を切に願うところです。
漢方薬の最大の魅力のひとつは、卵の質を向上させる点
不妊症になる原因はいくつかあります。内分泌・排卵因子、卵管因子、子宮因子、頸管因子、男性因子などがあります。いずれかで異常がある場合は、その原因疾患の治療を行います。異常がない場合は、すでに上で述べたステップ1からの治療が行われます。
そして通常ステップ3の人工授精でも妊娠できなかった場合に体外受精・顕微授精が行われます。ステップ3までに行われる排卵誘発法は変わりはありませんが、さらに人の手で精子や卵子を操作して受精させます。この技術によって約20%弱の方々が、妊娠・出産されています。
妊娠・出産へ至る大きな要素は、年齢。20歳代では妊娠率や生産率は高くかつ安定していますが、統計的に35歳を境に低下して行きます。流産率も全体では15%と言われていますが、35歳を過ぎると35歳:20%、40歳:40%、42歳:50%と急激に上昇します。これらの要因は、個人差はもちろんありますが、加齢による卵の質の低下です。体外受精・顕微授精においてもこの条件に変わりはなく、卵子の質を改善させる方法は西洋医学にはありません。ですから体外受精・顕微授精による成功への鍵は、卵子の質が握っていると言えます。
漢方薬の最大の魅力は、この卵の質を向上させる点にあります。多くの原始卵胞からふるいにかけられながら1年かけて選りすぐりの主席卵胞が育つわけですが、この卵胞形成の間にじっくりと漢方薬を飲むことによって、卵胞全体の質を向上させ、さらに選りすぐりの主席卵胞を得ることができます。この漢方の特徴を活かして、体外受精・顕微授精に臨んでいただければ、体外受精・顕微授精の欠点を補い、妊娠率・生産率を高めることが可能です。
最後に体外受精・顕微授精の治療成績を参考までに載せさせていただきます。
新鮮胚を用いた治療成績(2006年)
体外受精-胚移植(IVF-ET)
患者総数31,752
妊娠数8,499
移植当たり妊娠率28.9%
移植当たり流産率22.6%
多胎妊娠数1,161
移植当たり生産率18.3%
出生児数6,252
新鮮卵を用いた顕微授精法の治療成績(2006年)
患者総数34,231
妊娠数7,904
移植当たり妊娠率24.3%
妊娠当たり流産率24.3%
多胎妊娠数969
移植当たり生産率14.6%
出生児数5,401上の表は、平成19年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告から一部抜粋しました。
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