
慢性関節リウマチ(以下、リウマチ)は主に2平面関節の滑膜に炎症を来たし、関節の破壊・変形へと進行する疾患として特徴づけられています。日本には約70万人の患者がいます。男女比=1:4
※卑証の卑は、正しくは卑に病ダレがつきます。
卑証とは、一般的に関節の”痛み”や”しびれ”のことを意味します。体内の循環が何らかの原因で停滞した際に、漢方では”痛み”や”しびれ”が起きると考えられています。その何らかの原因とは、”湿邪(しつじゃ)”です。湿邪という文言をみて水のこと?と想像できますが、その通り水なんですが人間にとって体内に存在して欲しくない水の一種を湿邪と言います。湿邪は水は水ですが、国において例えるなら国民は国民としても反社会的な国民が湿邪であって、それ以外の善良な国民が水と言えます。
元々虚弱な体質であったり、過労や加齢で体が弱ったりしているところにこの湿邪が生まれると、経絡・筋骨・関節に湿邪が侵入し気血の巡りが悪くなり、さらに気血の運行が阻害されることによって、新たに痰濁(水のよどみによる病理産物)や淤血(血のよどみによる病理産物)が生まれ、それがさらに筋骨関節の巡りを停滞させて病態の悪化につながって行きます。
初期の段階は外から冷えを引き込んで湿邪と合わさって痛みやしびれを引きおこすのですが、経絡関節に止まり続けるとやがて化熱します。10人中9人は、化熱すると言われています。症状としては関節部の発赤・熱感・灼熱痛がり、温めると悪化し、冷やすと軽減する。
発症して約3年間は活動期(新後期)で痛みが酷く、この時期に骨が変形します。骨の変形は、肝腎が虚損されたと漢方では解釈します。この時期の治療は、瀉法(デトックス)中心になります。それ以降は痛みは軽減されますが、長期にわたって風寒湿熱邪が体内にいすわった結果、正気を著しく損なってしまいます。正気とは気・血・津液・精が合わさったもので、具体的には生理的活動・血液循環・神経活動・代謝・エネルギー代謝・免疫活動等と栄養物質・体内のあらゆる水液・生命エネルギーの基本となる物質などのことを総合して正気と言います。それが著しく損なわれますから、治療は正気を補うことが中心となります。
@ 寒証タイプ
関節の強い痛み、痛む部位は一定しない、或いはあちこち痛い、関節の冷感、屈伸が障害され、冷やすと痛みは増強する、温めると痛みは一時的に軽減される
治法: 温経散寒 去風勝湿
方剤: 烏頭湯加減など
A 熱証タイプ
関節部は強い発赤、腫痛があり触れられない、熱が強い場合は関節部は灼熱疼痛し、非常に強く痛む、痛みは夜に強く昼は軽い、不安感、ソワソワする、喉が渇く、小便黄赤、体がやせる、皮膚がざらざらする
治法: 涼血解毒 清熱通絡
方剤: 宣卑湯合二妙散 白虎加桂枝湯 犀角湯など
B 寒熱が混ざったタイプ
関節の腫脹、熱感は軽度から中等度にあり、関節所見は明らかに熱にもかかわらず、関節痛は温めると軽減し冷やすと悪化する、関節リウマチ発症から6ヵ月後くらいから起きることが多い
治法: 温経散寒 清熱通絡
方剤: 桂芍知母湯 桂枝二越婢湯など
@ 淤血タイプ
関節の変形、関節周囲の皮膚の色素沈着、関節周囲の毛細血管の拡張
治法: 活血化淤 通絡止痛
方剤: 身痛逐淤湯など
A 肝腎虚損タイプ
関節の変形、関節周囲の筋肉の萎縮、炎症は安定しているが関節周囲の筋痛・骨痛が強い、かかとの痛み、腰痛、腰や下肢の脱力感
治法: 益肝腎 補気血 活絡止痛
方剤: 附子湯など
B 陰血虚損タイプ
慢性関節リウマチが反復して癒えず、関節部がけいれんし、局部の軽度の発赤・腫脹、疼痛は夜間に増強することが多い、あるいは顕著な関節症状が無く、めまい、耳鳴り、口とのどの渇き、落ち着かない、手足のほてり、不眠、夢を毎日見る、腰膝のだるさみられる
治法: 滋陰泄熱 養血除卑
方剤: 左帰丸など
C 気血両虚タイプ
高度な関節変形を来たし、炎症所見はほぼ軽快したような段階
治法: 気血双補
方剤: 八珍湯など
骨と関節は破壊され強直固定し、次第に手の指・腕・膝・肘が曲がった状態で固定し、身の回りのことが一人ではできなくなる。烏梢蛇、サソリ、地竜、蝉退などの虫類を積極的に用いて、活血化淤・宣通絡脈を図る。
この記事を書いた人: 国際中医専門員 医薬品登録販売者 三ツ川道洋
この記事を監修した人: 薬剤師 三ツ川亜希