
2009年9月記載
風邪を引いたときに葛根湯等を飲んだことのある方は、たくさんおられると思います。そのときにどのように飲まれているのか、ふと気になりましたので、今回は正しい漢方薬の飲み方をご紹介したいと思います。正しく漢方薬を服用すると、さらに効果が期待できます。
風邪に用いる漢方薬には、葛根湯・桂枝湯(けいしとう)・麻黄湯(まおうとう)・小青竜湯などたくさんあります。たくさんあるのは風邪の進行度合や体質などで、その時その時の患者の風邪の状態にあわせて処方するのが、漢方薬の特徴だからです。そしてさまざまな風邪の状態に対応できて初めて一流であると言われています。
多くの風邪薬は、諸説ありますが今から約1800年前に書かれたと伝えられている”傷寒論(しょうかんろん)”という書物に記載されています。
その傷寒論の条文の一番初めに出てくるのが、桂枝湯という漢方薬で、そこに飲み方や養生法が詳しく記載されています。それらを以下にまとめましたので、ご自分が風邪を引かれたとき、ご家族の方が風邪を引かれたときに役立てていただければと思います。
温かいお湯で服用して下さい。これは粉を飲める程度の量では無くて、できればコップ一杯程度を飲んでください。桂枝湯を代表するように、漢方薬の風邪薬は体を温めてあげて、発汗させるように処方が組まれています。
温かいお湯で飲むということは、漢方薬のそうした目的を助けてあげる効果があります。※1
漢方薬をのんでしばらくしてから、重湯を飲んでください。これは@と同じように温める効果を狙ってのことがひとつ。さらに体の陰陽のバランスを整えるために、重湯を飲みます。
発熱や発汗があると、陰(物質)が消耗します。桂枝湯類は、陽気を守るために処方がくまれているので、重湯で陰(物質)を補ってあげて、桂枝湯の不十分なところを補完してあげるのです。
漢方薬と食物で病気を治すという発想は、なにも驚くことではありません。「風邪がなかなか治らない」でも説明しましたが、桂枝湯の構成生薬のほとんどが食物(シナモン・芍薬・甘草・ショウガ・ナツメ)だからです。
薬食同源。健康維持には、普段の食生活から大切であることがうかがい知れます。
私の場合、重湯では無く”玄心スープ”※2にしています。玄心スープは、玄米を炒って煎じた上澄みです。
ある日高熱を出した時に、妻が玄心スープをつくってくれて飲んだのが初めてなのですが、その時に本当に美味しくて、心と体が癒された感覚になり、これで治ると思ってしまうほど玄心スープには、感動させられました。病んいでる時に家族に作ってもらうものは何でも嬉しいものでしょうが、その中でもこれは胃腸に負担をかけないので、病中・病後の飲料物としては、横綱級であること間違いなしです。
@Aは、布団の中で飲みます。重湯或いは玄心スープを飲んだ後は、しっかり布団に入って寝て下さい。
全身から汗がにじむ程度であれば完璧です。ここで水が流れるほどに汗をかかせるのは、よくありません。かえって治りが悪くなりますし、発汗が過ぎると動悸や足がつったりするので、適度な発汗を心がけて下さい。
しかし、発汗が不十分だと風邪は進行していくということも頭に入れておいてください。
次に風邪を引いているときの食事ですが、以下のものを避けるようにして下さい。
風邪を引いたときは、食欲がなければ無理して食べなくてもかまいません。食べる場合は以上のことを、気を付けて、温かいあっさりしたものを食べるように心がけて下さい。
風邪を引くと栄養をたっぷり摂らないといけないとお考えの方は多いと普段感じていますが、それは往々にして逆効果であるとことが多いです。人間病気になると自然治癒力を高めないといけません。病気を治すために自然治癒力に全精力を傾けなければならない時に、食べ物をたべることによって、消化活動や解毒にエネルギーを割かなくてはなりませんから、必要以上に摂る必要はありませんし、食欲が無ければかえって都合がいいくらいです。食欲がなくなるのは、自然治癒力を高めるために、そのようなシステムに自然と体がなっているのかも知れません。
話はそれますが、癌患者さんで食養生に”玄米菜食”を取り入れられて治られたり、驚くほどの延命を保っておられたりする方々がおられますが、これは上記のことが関係していることは間違いありません。
以上が、漢方薬の風邪薬の効果的な正しい飲み方です。漢方薬局・薬店・病院で以下の処方を購入された場合一度試してみてください。桂枝湯・桂枝湯類・葛根湯・葛根湯加川?辛夷・独活葛根湯・小青竜湯・麻黄湯・麻黄附子細辛湯※ご自分の風邪の状態に適していない漢方薬を処方された方・ご購入された方は、上記の方法をとっても効果はありませんのでご了承ください。
※1 漢方薬の風邪薬の中に、辛涼解表薬(しんりょうげひょうやく)という少し冷やしながら、発汗させる漢方薬もございます。
※2 マクロビオティックを勉強している人は、玄心スープは”陰”を補うものではなく”陽”を補うものと思われるでしょうが、栄養物質を取り入れるという意味で、玄心スープを”陰(物質)”と捉えています。勿論、玄米を炒る分けですから陽気をたっぷり補っています。また炒るという行為は、胃腸にやさしくなるという効能をもたらすと漢方では考えられています。