アトピー性皮膚炎と漢方|漢方の和歌ノ浦薬局 大阪市中央区

アトピー性皮膚炎と漢方|漢方の和歌ノ浦薬局 大阪市中央区

三ツ川道洋
三ツ川道洋

目次
1.アトピー性皮膚炎とは
2.中医火神派から見たアトピー性皮膚炎
  〇これまでのアトピーに対する漢方療法の効果と限界
   ・アトピー性皮膚炎を熱証と判断して良く使われる漢方薬
   ・上記の漢方薬が合っていないと思われるケース
  〇中医火神派理論「扶陽学説」
   ・中医火神派理論から見るアトピー性皮膚炎の原因
   ・冷え(陽気不足)を持つアトピー性皮膚炎の方の体質の特徴
   ・アトピー性皮膚炎の炎症の考え方
   ・中医火神派理論によるアトピー性皮膚炎の漢方療法
3.アトピー性皮膚炎症例

アトピー性皮膚炎とは

まず漢方療法の説明に入る前に、西洋医学からみたアトピー性皮膚炎の定義、特徴をご紹介します。アトピー性皮膚炎とは、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの遺伝的なアトピー素因を有する個体に生ずる特殊な慢性、再発性の皮膚炎のことをさします。

 

 

 

アトピー素因とは

  1. 家族歴・既往歴に気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎を有し、
  2. IgE抗体を生じやすい状態

⇒そしてアトピー素因を持った皮膚に刺激が加わることによってアトピー性皮膚炎を発症します。

 

 

 

アトピー皮膚の特徴

  1. 乾燥した皮膚
  2.  ⇒バリア機能の低下

  3. 鳥肌だったような毛孔性角化
  4.  ⇒表皮内の角層と顆粒層が厚くなった状態で、毛孔に一致

  5. 皮膚表面が、魚のうろこの様になっている状態
  6.  ⇒下腿の魚鱗癬様変化

  7. 皮膚をこすると赤くならずに、そこだけ白くなる
  8.  ⇒白色皮膚描記症

  9. アセチルコリン皮内注射後3〜5分で蒼白斑
  10.  ⇒アセチルコリン遅発蒼白反応

  11. 眉毛外1/3の乏毛

 

 

 

年齢別症状

乳児期(2ヵ月から2〜4歳)症状
  1. 生後2〜3ヵ月ごろからはじまる
  2. 頭と顔に角化した皮膚や滲出物がそれらと混じって固まった状態の皮膚
  3. 顔とくに頬が潮紅し、角化した皮膚や掻き傷が見られる
  4. 次第に四肢や体に広がる
  5. ・広範囲に赤くなり、角化した皮膚や掻き傷が見られる
    ・一般的に乾燥性の肌で、掻くことによってジュクジュクしたり、それが固まった状態の皮膚も見られる
  6. 冬に悪化することが多い
  7. 炎症のない場合もある
     ⇒なくてもアトピー皮膚の特徴は、見られる

 

 

 

小児期・学童期(4から12歳)症状
  1. 乳児期から引き続き起こる場合と、一旦治まって再発するケースとがある
  2. ・皮膚の苔癬化が顕著・主体となる
      ・その周りに、赤いブツブツ散在する
      ⇒苔癬化とは:皮膚表面には、細かい溝(皮溝)が交差して、その間は菱形や三角形などに隆起(皮丘)しています。この菱形や三角形、多角形になっている所を皮野と呼びますが、この部分が皮膚病を慢性的に患うことによって、著明になります。これを苔癬化と言います。
  3. 細菌感染・ウイルス感染を起こしやすい
     ⇒伝染性膿痂疹・伝染性軟属腫(みずいぼ)・カポジ水痘様発疹症
  4. 7〜10歳で自然に治癒することも多い

 

 

 

思春期・成人期(12,3歳から)症状
  1. 小児期・学童期から治癒せずに続く場合と、思春期・成人期後から出現するケースがある
  2. 小児期・学童期で主体となっていた苔癬化が、さらに高度化かつ広範囲となる
  3. 好発部位は、顔・首・胸・背中・四肢・手
  4. 加齢とともに乾燥傾向が増す
  5. 劇痒のため掻き傷とかさぶたができる
  6. 下肢に痒疹丘疹を生ずることがある
  7. 成人特有の症状、色素沈着を起こす→首
  8. 顔の潮紅(ぼやっとした赤み)

 

 

 

西洋医学的な治療

症状を抑える対症療法(副腎皮質ステロイド外用薬、抗ヒスタミン内服薬、抗アレルギー内服薬)を行う。悪化させないように、保湿剤などのスキンケアを重視。

 

 

 

この記事を書いた人: 国際中医専門員 医薬品登録販売者 三ツ川道洋
この記事を監修した人: 薬剤師 三ツ川亜希

 

 

 

参考資料
皮膚科学第8版 上野賢一 大塚藤男著
皮膚病アトラス第5版 西山茂夫著

中医火神派から見たアトピー性皮膚炎

これまでのアトピーに対する漢方療法の効果と限界

これまでアトピー性皮膚炎の原因は、熱証(ねつしょう)であるというのが大方の見解でありました。細かくは血熱・熱毒・湿熱などに分類されます。そこに血虚・陰虚・陰虚陽亢・血オ(ヤマイダレに於)などが絡んでくるという考え方です。

 

 

 

治療法としては、清熱涼血・清熱解毒・清熱利湿という”熱”を冷ます清熱法を主体とします。効果としては、劇的に改善される方がおられる一方で、途中から壁にぶち当たる方が大半をしめます。この方法では10人中せいぜい1人完治すれば上出来です。100人完治させたと言えば聞こえはいいですが、この場合単純計算で900人治せていないことになります。このことをどう捉えるかでしょう。やはりアトピー性皮膚炎の原因を熱証中心に捉えるのは、限界があると思います。

 

 

 

アトピー性皮膚炎を熱証と判断して良く使われる漢方薬
アトピー性皮膚炎に使われる漢方薬
消風散 黄連解毒湯 荊芥連翹湯 柴胡清肝湯
白虎加人参湯 温清飲 越婢加朮湯 竜胆瀉肝湯
銀翹散 梔子柏皮湯 清上防風湯 滋陰降火湯
大黄牡丹皮湯 三物黄ゴン湯 黄連阿膠湯 治頭瘡一方
茵陳蒿湯 アクトマン 瀉火利湿顆粒 清営顆粒
涼解楽 天津感冒片

 

 

 

上記の方剤で消風散以外は、筆者も良く使用する方剤で、実際に著効に至った経験もあります。しかしある程度の期間服用して顕著な効果が現れない場合は、原因は単純な熱証ではない可能性があります。

 

 

 

上記の漢方薬が合っていないと思われるケース
  1. 皮膚の状態が、より悪化し続ける。
  2. ステロイドのレベルが上がる。ステロイドを塗る回数が増える。
  3. 服用を開始してから、寒くて仕方がないケース。
  4. 服用前のような酷い悪化は無いものの、同じように悪化と緩解を繰り返しているだけ。
  5. 胃痛が起きる・食欲が落ちる等、日常生活の中で服用前よりパフォーマンスが落ちている感じがする。
  6. 効果を感じない。

 

 

 

(1)〜(6)であれば必ず合っていないということではありません。大切なことは、原因は「熱」なのか「寒」なのかという判断がなされているかということであります。盲目的にすべての原因は、「熱」であると思いこんで服用している場合は、一歩立ち止まって考えていただきたいと思います。

 

 

 

「炎症=熱」という考えは、漢方の世界ではありません。万物全てに陰と湯が存在し、表もあれば裏があるという古代の思想の上に確立された漢方医学ですので、風邪・アレルギー性鼻炎・花粉症・喘息などを治療する際に、必ず「寒」「熱」両方の可能性を探って治療を行います。アトピー性皮膚炎もその例外では無いのです。

 

 

 

ステロイドに依存していた人が、ステロイドを止めることにより炎症やジュクジュクが悪化することは仕方がないことで漢方薬によるものだと断定できませんが、これまで通りのステロイドとの併用で悪化したりするということは適切な漢方薬では無い可能性があります。アトピー性皮膚炎は難治性疾患と言われていますから時には悪化もするでしょうけれども、ストレスや睡眠不足・生活の不摂生・季節の変化などが原因ではない場合の悪化に対して、きちんとそのつど漢方薬で対応できているかが大切です。症状の悪化に対して、悪いものが出ていると言う見解がありますが、甚だ疑問に思います。

 

 

 

(3)の解釈を巡って、本当は「熱」が原因であるのにもかかわらず、熱が強過ぎる場合に寒くなる時があります。これを真熱仮寒証と言います。この場合、清熱剤を用いることが正しい方法です。しかし、本当に冷えている場合に、清熱剤を用いれば当然寒さを訴えるでしょう。でもアトピー性皮膚炎を金科玉条のごとく「熱」証のみと思いこんでいるとどうでしょう?治るどころか、どんどん泥沼にはまって行くことになります。

 

 

(5)寒証(冷え)から起こっているアトピー性皮膚炎の患者さんは、胃腸も冷えていたり・胃腸機能が強くない人が多いです。このような人が、清熱薬を飲み続けることによって胃腸が冷やされて、胃痛が起きたり・食欲がなくなったり・下痢したり・体力が低下したり・風邪を引きやすくなったりします。こうなるとアトピーの症状は悪くなっても、良くなることはないでしょう。清熱薬の味は全部ではないですけれども、たいてい苦い味がします。ハーブ療法や自然療法と聞けば身体にやさしいと思いがちですが、味が苦いものは清熱薬であることが多いですから、身体にやさしいとは限りません。

 

 

 

漢方はバランスの医学です。熱証ばかりに治療が偏ってしまうと、上記の結果となってしまうことは当然です。アトピー性皮膚炎の原因を単純に熱証と考えられるほどこの疾患は単純では無く、もっと複雑です。ですから従来の方法による治療を経験されて良くならなかった方も、諦めないで下さい。過去の体験から、私には漢方は合わないという思いに至ってしまった方も、どうか諦めないで下さい。

 

 

 

これらの方に是非とも知って頂きたいことは、熱証だけではなく寒証(冷え)から起こるアトピー性皮膚炎があり、その治療方法もあるということです。

 

 

 

中医火神派理論「扶陽学説」

火神派と呼称される中医火神派理論は、清の時代の鄭欽安(ていきんあん、1824〜1911)が提唱しました。『易経』・『黄帝内経』・『傷寒論』という漢方において最も大切な古典をルーツにしています。鄭欽安は、これらを20年間研鑚し、『医理真伝』という本を残しました。

 

 

 

生命・熱エネルギー・体内のさまざまな生理機能の活動のことを”陽気”というのですが、『医理真伝』では「有陽則生、無陽則死」とあるように、この”陽気”のことをとても重んじています。病気は、「陽が不足している」か、「陽が盛んでいる」かのふた通りとし、とてもシンプルで斬新な考え方と言えます。真理は、往々にしてこういうシンプルなものなのかも知れません。

 

 

 

同時に”陰陽”の調和も大切であると説いています。人間の身体は、陰(肉体・骨・血液・脳髄など物質面)と陽(生命・熱エネルギー・体内のさまざまな生理機能の活動のこと)からなっています。陰と陽が量的にしっかりとあって、バランスが取れていれば、自然界との調和も取れ、人間は健康を保つことが出来ます。言いかえれば陰陽の調和の乱れが、健康を損ない病気へとつながって行くのです。陽気を最も重んじること、陰陽の調和、これこそが中医火神派理論の根本理念であり、真髄であります。

 

 

 

次に中医火神派理論によるアトピー性皮膚炎の原因をご説明します。

 

 

 

中医火神派理論から見るアトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の炎症の正体は、”冷え”?結論から申し上げますと、アトピー性皮膚炎の原因は、基本的に陽虚(冷え)と考えます。皮膚機能の低下・体表部のコントロールがうまく行かないのは、全て陽気不足と考えるからです。皮膚機能・体表部のコントロールの働きは、衛陽(えいよう)という陽気(機能面)がつかさどり、皮膚機能の低下等はこの衛陽の不足を意味します。衛陽の働きは具体的に、体表部の体温調節・体表部の防衛・汗や水分のコントロール・代謝・排泄などなど、多岐にわたります。

 

 

 

したがって、アトピー性皮膚炎の根本原因は、衛陽の不足で、衛陽の根源は、陽気ですから、陽虚・陽気不足・冷えであると言えます。さらに一般的に分かりやすく例えるのなら、『隠れ冷え性』と言えます。

 

 

 

※しかし、理論にはすべて例外があり、化膿している状態などは、陽が盛んでいる(熱証)と判断し、従来の漢方療法で対応しなくてはなりません。いずれにしても正確な漢方カウンセリングが必要となります。

 

 

 

隠れ冷え性(陽虚)→陽気不足→衛陽不足→皮膚機能低下→アトピー性皮膚炎へ

 

 

 

冷え(陽気不足)を持つアトピー性皮膚炎の方の体質の特徴
冷え体質(陽虚体質)の特徴
寒がり 四肢の冷え 体が冷たい
舌は潤っている 元気がない 疲労感
いつも眠い 大人しい 動きたがらない
横になっていたい ぽっちゃりしている 風邪をひき易く、治りにくい
暑がりの寒がり 皮膚の赤みは強くなく、部分的にポッと赤い アトピーの症状が、冬に悪化することが多い

 

 

 

陽気不足の方の特徴は、上の表でお分かりのうように、単に冷え・寒がるというだけでは無く、元気がないとか風邪をひき易いとか、体内が水浸しであるとか、物静かであるとか、冷え以外の特徴を持っています。アトピー性皮膚炎の患者さんは、やさしい大人しい方が実際に多くいらっしゃると感じています。

 

 

 

体内が水浸しであるというのは、代謝機能の低下によって起こります。これは内臓の鏡と言われている舌にも現れ、舌が通常に比べて濡れていたり、舌の苔がベトっと厚くなっている状態がそれを示しています。また皮膚の状態もジュクジュクと滲出液が出たり、また乾燥してカサカサしている肌のように見えても触ってみるとプヨプヨしているというような特徴も、水が氾濫している現れです。

 

 

 

このことは自然界の現象を見てみると、よくお分かりいただけます。自然界の”太陽と大地の水”の関係というのは、太陽の光の熱によって、大地の水は蒸発し天に昇り、また雨となって大地を潤すという循環をしています。ところが太陽の光があたらない地面では、いつまでもジメジメとしています。人間の体もこれと同じで、太陽に代わる陽気が不足していると、水の循環が行われず水浸しになってしまいます。

 

 

 

アトピーの症状が冬に悪化するのは、典型的な冷え(陽気不足)の方の特徴です。逆に梅雨からの湿度が多くなる季節に悪化する人は、もともと胃腸が弱い人や不摂生によって胃腸機能が低下している人に多く見られます。当然冷え体質(陽気不足)の人は、胃腸も冷えて胃腸機能が低下いしているケースが多いですから、両方の時期に悪化することがあります。

 

 

 

アトピー性皮膚炎の炎症の考え方

炎症には、大きく分けて二つに大別されます。熱による炎症なのか、冷えによる炎症なのか、いずれかをきちんと見分ける必要があります。皮膚の赤みに惑わせれてはいけません。

 

 

 

(1)熱が原因のアトピー性皮膚炎の炎症

このタイプの炎症は、非常に陽が盛んでいる状態にあります。一般的に漢方では、この熱のことを実熱と言います。実熱には、症状によって血熱や毒熱と判別します。陽が非常に盛んでいるので、舌が紅・舌苔黄・舌乾燥・脈が速い・尿が黄色い・尿量が少ない・便秘・熱がり・冷たいものが好き・イライラ・頭痛・めまい・耳鳴り・耳が塞がる・目の充血・顔が赤い・怒りやすい・不眠・落ち着かない・集中力がない・人の話を聞かない・生理周期の短縮・月経血の量が多く色が真っ赤などの症状を伴います。これらの症状がいくつかあると熱と判断します。

 

 

血熱の皮膚の特徴
皮膚の強い赤みがびまん性に広がる、赤い丘疹(ブツブツ、皮膚の盛り上がり)、腫れる、熱感、皮膚がめくれる、紫斑・鼻血・吐血・血尿・血便など出血傾向、発熱

 

 

毒熱の皮膚の特徴
皮膚の化膿、できもの、局部の赤み、腫れ、熱感、痛み、膿疱、伝染性膿痂疹など

このタイプは一般的なアトピー性皮膚炎の状態から、十分な治療をぜずに放置していたり、不適切な治療であったり、細菌やウイルスの感染であったり、飲食の不摂生、生活の乱れなどで、通常よりも悪化している状態と言えます。

 

 

 

(2)冷えが原因のアトピー性皮膚炎の炎症

このタイプの炎症のことを、”浮火”或いは”浮陽”と呼びます。陽気不足によって冷えを生じ、なんとか残り少ない陽気を体表部や体の上部に押し上げようとする働きにより起こります。真寒仮熱(しんかんかねつ)とも言い、本当は冷えているのだけれども、熱(仮熱)の症状が現れます。浮火によって現れる症状の特徴として、頬の紅潮があり、アトピー性皮膚炎の症状の特徴のひとつと一致します。それ以外には、イライラ・口渇・のぼせ・ほてり・寝汗・落ち着かないなどの一見すると熱の症状が現れます。しかし、本当は冷えているので、陽虚体質の特徴の表で示したような症状をともないます。

 

 

 

冷え(陽虚)で起きるアトピー性皮膚炎の炎症の特徴は、強い赤みであはりません。部分部分にポッと赤みを帯びるような感じと思っていたいただければ結構です。

 

 

 

中医火神派理論によるアトピー性皮膚炎の漢方療法

これまでアトピー性皮膚炎の原因は、熱証だけでなく、冷え(陽虚)もあると説明して来ました。そしてアトピー性皮膚炎の病理機序・陽虚体質の特徴・陽虚で起こる炎症の仕組みについても説明しました。そこで次は、漢方療法の説明に入ります。

 

 

 

漢方療法の特徴として、結果(アトピー性皮膚炎)を見ないで、まず原因(陽虚/冷え)を見ることにあります。これは漢方カウンセリング(弁証論治;べんしょうろんち)から治療法を導くまでの基本中の基本です。これまでのアトピー性皮膚炎の漢方療法は、結果(皮膚の炎症等)を重視し過ぎるあまり、見えない出口に迷い込んでしまっています。原因を解決すれば、自ずと結果は変わります。

 

 

 

中医火神派理論から見るアトピー性皮膚炎の原因で説明したように、アトピー性皮膚炎は皮膚機能が低下している状態です。さらにその原因の根本は、陽虚にあります。ですから漢方療法の基本は、陽気を補います。原因を改善することで、原因(陽虚)によって起きている結果(炎症・痒み等)を改善させます。

 

 

 

陽気を補うということは温めるということなのですが、一口に温めると言っても、中医火神派理論に基づいて温めます。下の表に示しているような働きをする漢方薬を選びます。

 

 

 

温めるとは具体的に何をしているの?

    身体の中の冷えを追い出す  身体の中の陽気を補う  身体の表面の陽気を補う

    皮膚機能の回復  体表部のコントロール回復  防衛力改善  陰陽の調和  代謝機能UP

    炎症軽減・改善  痒み軽減・改善  ジュクジュク軽減・改善

 

 

 

また浮火・浮揚には、温滋潜陽(引火帰源)という方法で、浮き上がって来るなけなしの陽気を、陽気が生み出す元の場所に引き戻します。

 

 

炎症
(浮火・浮陽)

下向きの矢印

温滋潜陽
引火帰源

下向きの矢印 浮き上がって来るなけなしの陽気を、陽気が生まれる元の場所に引き戻す

 

 

 

以上が、中医火神派理論の漢方療法の基本的な考え方・方法になります。臨床的には、お一人お一人症状・体質が違いますから、当然それに合わせて対応します。

アトピー性皮膚炎症例