
40代 男性、冷え性は小学生の頃からで、冬が特に冷える・お風呂に入らないと冷えはなくならない・寝る頃には足が氷のように冷たくなる・平熱35℃台という。
こういう冷え性を何人も診てきている私の手にかかれば楽勝、1ヵ月後には治ってるでしょうと余裕をかましていたところ。冷え性はよくならず、クーラーで相変わらず冷えてますとのこと。まさかの効果なし。あれ〜!?この男性どう考えても陽気内鬱(ようきないうつ)でしょ!と。楽勝パターンが、まさかの効果なし。
但し、陽気内鬱による寝つきの悪さ・頭のほてり・胃が気持ち悪い等の症状は改善しているので、陽気内鬱という見立ては間違ってはいない。確かに陽気内鬱はある。
ただ冷えが改善されなかったことから、他に原因があるはず。
冷えの原因は、陽気内鬱の他に陽虚(ようきょ)と血虚(けっきょ)がある。でも陽気内鬱ではないとしたら、この二つのどちらかしかない。どちらでもないんだけど、低体温(35℃台)ということで強いて選ぶとすれば陽虚かと。因みに時期は、7月下旬。
それで陽虚を治す漢方薬を出したところ、ほてりが復活し、元々汗かきだったがよりかくようになり、加えて汗が臭くなった。肝心の冷えは、「飲み始めた次の日から足にカイロを当てているみたいになった。」「起床時に足が温かい日が出て来た。」「クーラーが強いと冷える。」ということだった。
冷えに対してある程度効果を出しているようなので継続することにしたもののどうも釈然としない。
ほてり・ビシャビシャになるほどの汗・汗が臭うように。このワードがひっかかる。これは湿熱の症状ともとれる。
そこで何か解決の糸口は無いかと火神派の医案解説集をパラパラと流し読みをしていたところ、なんと湿熱の冷え性が載っているではないか!?湿熱が冷えの原因なんて。湿はいいとして、熱やで熱!冷え性で熱!?
これには結構なインパクトはあったものの実際この男性、湿熱の症状があり、かつ冷え性。これで行けるかも。それまでのもやもやがいっきに晴れ、もうこの男性の冷え性は湿熱だと確信。
次に薬局に来られた時に、このことをご説明して湿熱を取る漢方薬に切り替えた。ただ冷え性で低体温の人に冷やす漢方薬なんて、とこれまでの常識が心のブレーキを踏む。ただ詳細に分析した結果いきついた答えなので、間違いないと心に決めて処方を準備、そして4週間後・・・。
「産まれてから一度も36℃台になったことがなかったのに36℃の日が3日あった。」と劇的ではないが、良い兆しではないか!それからほてる症状が無くなり、汗の量が減り、匂いも気にならなくなったとのこと。良いかも知れない。少なくとも冷やす漢方薬を飲んで冷え性が悪化してない。これが驚きである(これまでの常識で考えると)。
その後、3ヵ月間冷やす漢方薬を継続し、1月。季節は冬。36℃台の日がさらに増え、部屋で冷えることがなくなり、足が氷のように冷えることもなくなる。
おっしゃあ!!!勇気を持って処方したかいあり。これは2021-22シーズン最大の発見であり、ブレークスルーした一つと言える。
「火神派の医案解説集に書いてあっただけやん。」とツッコミを入れる方もいらっしゃるでしょうが、冷え性の原因は3つあると言われている中で、どれにも属さないことに疑問を感じてたどり着いた結果だったので、自分の中では発見であり、ブレークスルーといえる。
これで困っている人のお役に立てることがまた一つ増えた。
冷え性の最新情報、湿熱でも冷え性になる。
この記事を書いた人: 国際中医専門員 医薬品登録販売者 三ツ川道洋
この記事を監修した人: 薬剤師 三ツ川亜希
最終更新日: 2022.03.01