多嚢胞性卵巣症候群 排卵期の不調 不正出血 漢方併用で10ヵ月で妊娠

多嚢胞性卵巣症候群 排卵期の不調 不正出血 漢方併用で10ヵ月で妊娠

当店で子宝相談をされて妊娠・出産された方々の症例をご紹介しています。

K.M.さん 32歳 女性 会社員 大阪市西区 漢方薬服用10ヵ月で妊娠(タイミング療法)

来局前

  • 2016年03月 多嚢胞性卵巣症候群と診断される。3cmの子宮筋腫が、内膜と卵管を圧迫(の可能性)。
  • 同年09月に結婚。
  • 同年10月からI薬局で5ヵ月間漢方薬を購入
  • 2017年08月 頸管のポリープを切除
  • 同年09月09日 漢方の和歌ノ浦薬局へ

 

 

 

初回問診結果

  • 排卵期: 体がだるく重たい、やる気が出ない、眠気が酷く集中力が落ちる、頭痛、夜中に目が覚める
  • 生理周期: 39〜49日間
  • 生理痛: 元々は動けなくなるほど酷かったが、ここ数ヵ月はクスリ無しでやり過ごせる程度
  • 生理中: 下痢、頭痛
  • 生理前: イライラ少し、生理前日に悲しくなる、胸の痛み、吹き出物、便がスッキリ出なくなる、夢が多くなる

 

既往歴

多嚢胞性卵巣症候群、子宮筋腫、乳腺嚢胞、頸管ポリープ、不正出血

 

その他自覚症状

食事の量が減っている、食事中に眠くなる、軟便ぎみ、冷え性、寝起きが悪い、日中眠い、倦怠感

 

 

 

漢方服用後

約1ヵ月後》
・不正出血が起きる
・生理前日に悲しくならず
・生理中に頭痛が起きず
・数年ぶりに生理痛がきつかった(1時間で治まった)
・食事中の眠気が少し改善する
・軟便が少し改善

 

 

 

約1ヵ月半後》
・不正出血が続き、病院から低用量ピルが処方される(fshが高く卵巣の疲れと診断)

 

 

 

約2ヵ月後》
・ピル服用継続中
・少しだけ午前中足先が冷える
・たまに倦怠感があり、1度だけだるくて微熱があった
・食事中の眠気がかなり改善
・軟便の回数が減
・朝普通に起きれるようになる

 

 

 

約3ヵ月後》12月
・ピル服用継続中
・寒くなり午前中冷えを感じる。午後からは感じない。

 

 

 

約4ヵ月後》
・ピル終了

 

 

 

 

約5ヵ月後》
・不正出血起きず
・排卵期の不調が起きず
・朝だけ足先が冷える
・朝の目覚めが良い

 

 

 

約6ヵ月後》
・生理前の不調が全て起きず
・生理中の下痢は無くなったが、頭痛はあった
・冷え性あまり気にならなくなる
・食事中の眠気が無くなる
・普通便に改善
・朝の目覚めが良い

 

 

 

約7ヵ月後》
・不正出血復活、プレマリンとノアルテンで生理をリセットする
・冷え性は気にならない

 

 

 

約8ヵ月後》
・不正出血起きず
・生理周期17日目に卵胞20mm、内膜8.4mm(排卵誘発剤のフェマーラ処方)
・排卵期の不調起きず(排卵して2日後だけ眠かった)
・生理前に吹き出物が出る、便が硬くなる
・冷房でたまに寒いと感じる

 

 

 

約10ヵ月後》
・フェマーラでは今回卵胞が育たず、注射に切り替えると卵胞が22mmに育つ。内膜は8.2mm。
・2018年7月7日 妊娠検査薬陽性の報告を受ける

 

 

 

2018年09月08日 13週3日で順調。16週の安定期まで漢方薬をお出しし休薬。

 

 

 

漢方まとめ

これから妊活をスタートするにあたり、病院には行かずとりあえず漢方薬を服用しながら妊娠を目指いたいということであった。多嚢胞性卵巣症候群(以下PCOS)と子宮筋腫の内膜と卵管への圧迫(の可能性)があるが、PCOSは多数経験し、圧迫の可能性も断定はされていない、何よりも32歳とお若いのである程度漢方薬を服用すればうまく行くだろうと考えていた。ところが途中不正出血が起き、何日も続いたため低用量ピルで治療することになり、これであっさり止まってくれれば良かったが、途中ピルを服用しているのにもかかわらず不正出血が10日間あったことで、これは難しいかも、長期になるかも知れない、と考えを改めた。幸いその後の2周期は、不正出血は起きなかったのでそこは明るい材料であった。

 

 

 

さて、漢方の治療経過はというと不正出血はあったものの、体質改善は上記の通り徐々に改善してくれた。冷えは酷くていったん冷えると自力では回復しなかったのが、午前中だけ足先が冷える程度に改善された。胃腸もかなり弱く食事中から眠気に襲われる程であったのが、それも改善され、軟便も改善された。日中の眠気が改善され、何より朝の寝起きが良くなった。朝の寝起きの悪さが改善するのは、実はけっこう難しいので、かなり前進と考えてよい。

 

 

 

低用量ピルの治療が3周期を終えて、自然周期に戻したところ、不正出血が起きず、ご本人が一番治したいと仰っていた排卵期の不調が全く起こらずで、その次の排卵期にも不調は起きず、順調に体質改善は進んだ。しかし、また不正出血が起き、一時治まったものの再び出血があり、プレマリンとノアルテンでリセットすることになった。体調面は、それとは反対にかなり良い方向に向かっている。

 

 

 

ここで漢方の中身を伝えていなかったので書くことにする。主訴が排卵期の不調ということだったので、まず気の巡りを良くする生薬、妊娠にとって大切な血を補う生薬、元気を補い気を上にあげる生薬が配合されている漢方薬をお選びした。約2ヵ月間は、同じ漢方薬を飲んでいただいたが、前述の不正出血とその前に生理痛が酷かったことから、生殖能力をつかさどる腎の力を高める漢方薬と血の巡りを良くする漢方薬を加えた。また不正出血が一時落ち着いていたときに補腎薬を変更した。理由は、さらに補腎力を強めることが目的。

 

 

 

リセット後に始まった生理から排卵誘発剤のフェマーラが処方された。生理周期が長いことが処方された理由。プラス血液検査でTSHが基準値を越えていたため(2.8)チラージンも処方される。この周期で卵胞は20mm、内膜が8.4mmだった。不正出血は起きず。若干食欲が落ちる日がある。久しぶりに排卵期に眠気。淤血の症状がとれ血流を改善する漢方薬を外す。

 

 

 

次の周期はフェマーラとHMG注が処方される。卵胞22mm、内膜8.2mm。漢方薬は、そのままの処方で。そして42日後、今朝妊娠検査薬で陽性が出たと妊娠報告がある。その後心拍が確認され順調に育ち16週まで漢方薬を服用していただいた。

 

 

 

今回の症例に関しては、漢方薬単独では難しいというか長期化していたと思うし、10ヵ月で妊娠は無理だったと思う。逆にこれだけの虚弱体質だと病院治療単独では計画通りには行かなかないだろうし、両者が補完しあったことが、このような素晴らしい結果になったと言える。当初の目的はとりあえず漢方薬でということだったが、それだとこうはならなかったと思うので西洋医学にドクターに感謝したい。そしてK.M.さん、おめでとう!!

 

 

 

  • この記事を書いた人: 国際中医専門員 医薬品登録販売者 三ツ川道洋
  • この記事を監修した人: 薬剤師 三ツ川亜希

 

 

 

投稿日: 2018.11.16

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