漢方で改善。花粉症の症例。

女性 45歳 会社員 大阪府在住

数年前の症例の掘り起しである。花粉症に関して今では特別に難しさを感じることなくやっていることを、7年くらい前までは試行錯誤を繰り返してうまく行かないことの方が多かった。勿論そういう積み重ねがあったから今は簡単に処方を組み立てることが出来ているわけだが。そこでこれまでの漢方治療体験を整理するために症例を振り返ってみることにする。

 

 

 

毎年2月に入ると花粉症を発症する女性の症例である。

 

 

 

症状は、のどの痛み痒み・頭痛・微熱・倦怠感から始まり、くしゃみ・鼻水・皮膚の痒み(皮膚表面ではなく奥とのこと)・皮膚の乾燥・目の痒み・耳の奥の痒み・口喝・喉が枯れる・悪心。元々から虚弱体質で胃腸が特に弱く、日常的にストレスがとても強くかかっている方だった。

 

 

 

花粉症はここ何年も毎年発症しているということから、元々の体質から診ても衛気不足と弁証した。漢方薬は基本通り衛益顆粒を中心に優しめの去風薬・衛営調和の桂枝湯等々を処方。1週間後、くしゃみの回数が減り・鼻をかむ回数も減った。倦怠感・悪心は消失した。その1週間後、鼻水をかむ回数が減ってはいるがスッキリとはいかず、目の痒み、のどの痒み乾燥感、耳の奥の痒み・微熱・倦怠感・頭痛に変化なし。基本通りにやっているのにおかしい。と当時はそう思っていた。この処方構成で実際にそこそこ手応えを感じていたし、リピートしてくれる患者さんも増え正直満足もしていた。

 

 

 

しかし、今から思うとこれはちょっと優しすぎる処方と言えるし、熱証を無視しているということが分かる。優しすぎるというのは、桂枝湯を選択している点である。当時、今もそうだが、“小青竜湯を使い続けると初めは効くが途中から効かなくなる”ということを一部?の業界で言われているため、桂枝湯を選択し麻黄剤を避けていた。或いは、川?茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)を選択していた(こちらの方が桂枝湯より効いていた気がする)。もう一つの熱証であるが、例えば熱証に対して銀翹散を使っても効果がいまいちでズバリ効果を感じたことが一度も無かったことと、素体が寒証なので単純に清熱しても効果がないことも分かっていたからである。弁証は間違っていた分けではないが、方剤を選択するところでやはり勉強不足と経験不足が出ていた。

 

 

 

この症例の患者さんは、別の疾患で当薬局の漢方薬を服用していたため、幸運にも次の年も花粉症対策の漢方薬を処方できる機会を得た。ありがたい。この年も同じく2月の初めに花粉症を発症。症状も全く昨年と同じだった。

 

 

 

選んだ処方は麻黄附子細辛湯を中心にもう1方剤と生薬1味を処方。昨年と違う点は、麻黄剤を使用したことである。麻黄は、花粉やウイルスと戦い或いは追い出して症状を改善する漢方生薬。附子は、免疫力の源である腎に直接アプローチし免疫を活性化する生薬。細辛は、麻黄と附子がそれぞれ効果を発現している場所をつなぎ、麻黄の効果を後押しし、陰陽調和させる生薬。

 

 

 

1週間後、これが奏効してのどの痒み、耳の奥の痒み・微熱・倦怠感・頭痛はほぼ消失した。くしゃみ・鼻水は、ぴたっと止まったわけではなくあるのはあるという程度に落ち着いた。ただ、喉の乾燥感、口喝、目の痒みが強いようで熱証を降ろすにはまだ弱く、麻黄附子細辛湯はそのままにほんの少しだけ清熱する漢方薬に変更した。

 

 

 

そして2週間後、喉の乾燥感、口喝、目の痒みは軽減し、さらに2週間後にはほぼ改善した。ほぼというのは、1日1回は鼻をかむとか目が少し痒くなる程度の症状があるため。よっしゃあ!と言いたいところであるが、実はここからが花粉症漢方の真価が問われる時期なので喜んではいられなかった。この方は例年ここからGWまでの1ヵ月間が一番酷くなる時期であるからだ。そして結果は。ピークの季節になっても再発せず、それどころか後半は花粉症の漢方薬を服用しなくても症状は落ち着いたままシーズンが終わったのである。これ以降、花粉症は私にとって特別難しい疾患では無くなり、多くの患者さんに喜んでもらっている。

 

 

投稿日: 2017.11.28  文: 三ツ川道洋